「自分は働いているから障害年金はもらえない」と思う方も多いですよね。
しかし、障害年金では『就労=不支給』という訳ではありません。
意外かと思いますが、認定基準の中には「仕事をしているからといってすぐに不支給!と判断しないで」との記述があるのです。
ただ実際に多くの事例に触れていると審査の上では、お仕事をしている場合は認定が難しくなっているというのが率直な感想です。
それでは、うつ病などの精神疾患に伴う障害年金と就労の関係について、詳しくみてみましょう!
就労にまつわる認定基準など
障害年金の審査は障害認定基準に基づいて行われます。
それでは、基準の中で就労がどのように定められているかを見てみましょう!
お仕事 | |
1級 | 就労不可 |
2級 | 労働により収入を得ることが出来ない程度 |
3級 | 労働に著しい制限を加えることを必要とする程度 |
障害認定基準
現に仕事に従事している者に ついては、労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況等を十分確認したうえで日常生活能力を判断すること。
精神等級判定ガイドライン
- 労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、現に労働に従事している者については、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況などを十分確認したうえで日常生活能力を判断する。
- 援助や配慮が常態化した環境下では安定した就労ができている場合でも、その援助や配慮がない場合に予想される状態を考慮する。
- 相当程度の援助を受けて就労している場合は、それを考慮する。
- 就労の影響により、就労以外の場面での日常生活能力が著しく低下していることが客観的に確認できる場合は、就労の場面及び就労以外の場面の両方の状況を考慮する。
※参考
『国民年金・厚生年金保険 精神の障害に係る等級判定ガイドライン』/10ページ目
相談事例から見る就労と障害年金
お電話いただいたのは、請求者ご本人のお母様からでした。障害年金はご家族で請求されたそうで、結果は不支給だったとのこと。
詳しくお聞きすると、以下のようなことが分かりました。
基本情報 | 初診日:20歳前 |
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年金の種類:障害基礎年金 |
障害の程度 | 診断書:2級または3級相当 |
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就労状況:週に3回程度、1日に3時間ほどのアルバイトを行っている。 |
※ご相談者様の許可を得て掲載しております。
不支給の原因を検証!
お母さまから提出した資料一式のコピーもいただきましたが、確かに2級に認定されてもおかしくない内容で、他の資料にも、不支給になる要素は見当たりません。
不支給となった原因といえば「アルバイトしている」という記述であると推測できます。
一言でアルバイトといっても、元気いっぱいに働いているのか、やっとの思いで続けているのかなど、その背景が大切になります。
今回のご相談者様の場合を詳しくヒアリングしてみると次のことが分かりました。
□行動療法の一環としてリハビリ目的で働いている
□親族が営む居酒屋さんのお皿洗い
□苦手な接客は、しないように配慮してもらっている
□体調の悪い日は欠勤、遅刻、早退OK
しかし、提出した書類ではそのような配慮は一切記載されていませんでした。
これでは審査側からすると元気いっぱいに働いていると思われても仕方ありませんね。
審査で見られる就労のポイント!
就労の状況については、単に「仕事をしている」ことだけではなく、通勤、職場の支援体制、他の従業員とのコミュニケーションなどについても重視されています。
例えば下記のような内容も、認定上総合的に判断する材料となります。
- 仕事の種類
- 仕事内容
- 就労状況
- 仕事場で受けている援助の内容
- 他の従業員との意思疎通
つぎから、一つずつ詳しく説明していきます!
仕事の種類
どのような雇用形態で、どの位の時間勤務出来ているのか?といった情報も重要です。
勤め先 | 一般企業、障害者雇用、就労移行支援、就労継続支援(A型・B型)など。 |
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勤務時間 | 1日3時間、週1日、など。 |
その他 | 1カ月の勤務日数(欠勤や休職の有無)、給与額など。 |
仕事の内容
業務内容も審査するうえで重視されています。また発病前後の仕事内容の変化も、現在の病状を把握するためには重要な材料となります。
業務内容 |
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発病前後の変化 |
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就労状況
就労中の様子だけではなく、通勤時や就労後の様子も審査されるポイントとなります。
通 勤 |
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勤務中 |
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帰宅後 | 帰宅後に疲れ果ててしまって、何もできなくなる、など。 |
仕事場で受けている援助の内容
うつ病の症状に配慮された援助がある場合、就労可能であるのは援助があるためと判断されます。
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他の従業員との意思疎通
うつ病の症状として、集中力の欠如や意思疎通の困難さなどがあります。
これらの症状がある場合、連携が求められる職場内では業務に支障をきたし易いため、等級判定の際は参考事項として考慮されます。
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添付書類を充実させよう!
審査は原則、書類の内容をみて判断します。
みられるポイントを押えたうえで、その内容を書類に反映させることが大切です。
提出すべき書類だけでは、正確に症状・状況を理解して貰えない可能性もあります。
症状・状況の確認できそうな参考となる資料があれば積極的に添付していくのも1つの方法です。
医師の意見書
所定の提出書類のうち、医師の評価等が確認できるのは診断書に限られます。
診断書だけでは、詳しい日常生活状況や職場での状況は書ききれません。
そこで、医師と相談したうえ意見書により詳しい状況など記入して貰う方法もあります。
職場での支援状況等申立書
うつ病に理解ある職場では、就労中に支援・援助が受けられる場合があります。
負担の大きい業務の免除や休憩時間の確保等、何らか職場内での支援がある場合は、別紙で支援内容を申し立てるのも良いと思います。
職場関係者からの評価(意見書)
就労時の様子などを病歴就労状況等申立書で自分自身で記入することもできますが、第三者(上司、同僚など)に記入してもらうことでより客観性が確保できます。
支援者などからの申立書
審査では仕事以外の日常生活の様子も重視されるため、詳しく伝えることも大事です。
身近な支援者(家族や配偶者、恋人、友人など)や公的支援者(ヘルパーさんなど)に、援助している内容などを別紙の申立書に記入してもらうのも良い方法です。
症状が確認できる写真
仕事により日常生活に支障をきたしている場合、気力が湧かず部屋が荒れ放題となっているケースがあります。
このような日常生活状況をより理解してもらうために、自宅内の写真等を添付することも有効です。
よくある質問
Q. 障害者手帳が無いと受給できませんか?
A. いいえ
そもそも、障害者手帳と障害年金は別々の制度です。手帳が無くても障害年金を受給することは可能ですよ。
Q. 障害年金を貰うようになった場合、会社にばれますか?
A. いいえ
会社が障害年金の受給状況を把握するはありません。会社が受給していることを知るのは、自分や周囲から申告した場合などですね。
Q. 障害年金を貰いながら仕事を続けてもいいの?
A. はい
退職を見越して障害年金を検討される方も多いかと思います。しかし障害年金を貰いながら出来る範囲で仕事をすることはとくに問題ありません。安定的な就労ができるようになったときは、更新時に障害が一時停止されることはあります。
Q. 退職しようと考えています。障害年金の他に受給が出来る制度はありますか?
A. はい
たとえば「障害手当金」という別の制度があります。その他にも要件がそろえば失業手当の受給期間を延長できる方法などもございます。障害年金だけでなく、他の制度も気になる方はぜひ一度ご相談ください。
まとめ【働きながら障害年金をもらうのは悪いこと?】
これまで働きながら障害年金を受給していくことを中心にお話を進めてきました。
その中で「働いているのに障害年金貰っていいの?」疑問を抱くかも知れません。
これについては様々な意見があるかと思いますが、重要なのはなぜ障害年金を受給するのかです。
うつ病を抱えながら働くことって簡単だと思いますか?
働いてるから回復していると思いますか?
働き始めたら体調は崩さないと断言できますか?
うつ病はすぐに回復する病気ではありません。それを踏まえたうえで、用意されているのが障害年金です。
症状が安定して継続して労働できるようになれば障害年金は停止しますが、症状が安定するまで障害年金に頼ることは決して悪いことではありません。
うつ病で働いていても障害年金を貰えることもある、ということを知ってくださいね。
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