障害年金に関する質問で多いのが
障害年金はいつまでもらえるのでしょうか?
という内容です。
年金証書には、どこを見ても障害年金の支給期間が明記されていませんので、『いつまでもらえる』という期限を確認したくてもできないため、そういった疑問や不安を抱えるのは当然です。
結論から申し上げますと、障害年金は明確な期限をもうけている制度ではないため、受給の権利があり、認定基準に該当し続ける限りは受け取ることができます。
ただし、障害年金を受け取り続けるためには更新が必要ですし、場合によっては支給が止まってしまうこともあります。
そこで今回は、
- 障害年金を受け取り続けるために必要な更新について
- どういった場合に障害年金の支給が止まってしまうのか
についてご説明をします。
障害年金の更新について
障害年金は、障害の症状によって支給が決まる制度で、認定を受けると、障害状態である限りは支給され続けます。
しかし障害年金には、期限のある有期年金(有期認定)と無期限の無期年金(永久認定)の二種類があり、有期年金の場合は、対象である障害状態を見直される更新の時期があります。
障害年金は、待っているだけで自動的に更新されるものではないのです。
更新の時期は、明確に決まっているわけではありません。障害の種類や症状によって、1年から5年の間に更新の時期がくるようになっています。
では、次回の更新時期はどのようにすればわかるのでしょうか?
更新時期の確認方法
次回の更新時期は、年金証書で確認することができます。
年金証書の右下に、次回診断書更新月が記載されており、その月の初旬に日本年金機構から診断書が送られてきます。
送られてきた診断書は、届いた月の月末までに提出しなければなりません。
年金証書右下の次回診断書更新月の欄に数字がなく、**年**月という記載になっている場合は無期年金です。更新をしなくても本人が亡くなるまで障害年金は支給され続けます。
障害年金の支給停止と失権
障害年金は、具体的な支給期間は決まっていませんが、途中で支給されなくなるケースもあります。
障害年金が支給されなくなるのには、支給の権利そのものが無くなる『失権』と支給の権利を停止する『支給停止』の2パターンがあります。
ここからは、失権と支給停止についてと、具体的なケースについてご説明します。
障害年金の支給停止
支給停止とは、障害年金を受け取る権利はあるものの、特定の理由によって支給が止められることです。
停止の理由がなくなれば支給は再開されますが、停止期間の年金がその後に支払われることはありません。
支給停止の原因には次のようなものがあります。
- 更新時に提出した診断書で再認定がおこなわれ、支給すべき障害認定基準に該当しなくなったとき
- 障害者年金の受給と同じ傷病で労働基準法の規定による損害賠償を受給するとき
- 第三者行為による障害で、損害賠償金を受給するとき
- 障害厚生年金の受給権がある方が、同じ部位・原因で障害共済年金を受給するとき
- 20歳より前に初診日がある方で一定以上の所得があったとき
それでは、ここからは支給停止の各原因について、もう少し詳しく説明をしていきます。
原因1:更新時に提出した診断者で再認定がおこなわれ、支給すべき障害認定基準に該当しなくなったとき
更新のある障害年金受給者は、障害の種類や症状によって1年から5年の期間後に障害状態確認届が送付され、診断書を提出し再認定を受けることになります。
その際、認定基準に満たない程度まで症状が回復している場合は、障害年金の支給が停止します。
診断書ひとつで受給が止まる可能性があるので注意をしなければなりません。
受給者本人は症状が変わらないと思っていても、診断書に実際の症状よりも軽く記載されると支給停止になることがあるからです。
自分の症状は改善しないものだと医師から言われているので支給され続けれる思っている方は、トラブルにならないよう注意が必要でしょう。
特に、更新の診断書の作成医が変わった場合などは要注意です。
一度、支給停止になると、再開されるまでに時間や費用を要するので、十分に気をつけなければなりません。
障害年金を申請する際の診断書は事前にコピーをとっておき、作成医が変わったときなどは参考資料となるように事前準備をしておくことが大事でしょう。
原因2:障害者年金の受給と同じ傷病で労働基準法の規定による損害賠償を受給するとき
障害基礎年金は、受給者が当該傷病による障害について、労働基準法による障害補償を受けることができるときは、6年間支給停止になります。
なお、労災保険法の障害補償、傷病補償、休業補償給付が支給されるときは、障害基礎年金は全額支給され、労災保険の方で金額の調整がおこなわれます。
原因3:第三者行為による障害で、損害賠償金を受給するとき
第三者行為による事故などが原因による病気・怪我で損害賠償金を受け取る場合は、障害年金との間で調整が必要になっていきます。
事故にあった日から最大36ヶ月間、障害年金が支給停止になります。ただし、障害年金を受給できるのは、障害のために病院で初診を受けた日から1年6ヶ月後になり、受給決定の時点で18ヶ月経過しているため、実質的な支給停止期間は最大1年6ヶ月になります。
原因4:障害厚生年金の受給権がある方が、同じ部位・原因で障害共済年金を受給するとき
障害厚生年金の受給権がある人が、障害厚生年金と同じ部位、原因で障害共済年金の受給権も得た場合は、障害厚生年金の支給を停止し、障害共済年金だけが支給されることになります。
原因5:20歳より前に初診日がある方で一定以上の所得があったとき
20歳になる前に病気や怪我によって病院で初診を受けた障害年金受給の方は、所得の金額によって障害年金が支給停止なる場合がります。
年間所得が、360万4000円以上あると半額支給停止、年間所得が462万1000円以上あると全額支給停止になります。
受給者の年間所得 | 360万4000円未満 | 360万4000円以上 | 462万1000円以上 |
障害年金 | 全額支給 | 1/2支給停止 | 全額支給停止 |
扶養家族がいる方は、所得額が優遇され、扶養家族1人につき38万円を加算した金額が支給制限の対象となる年間所得額になります。
また、70歳以上の老人扶養親族がいる方は48万円、16歳以上23歳未満の特定扶養親族がいる方は63万が1人につき加算されます。
このように、20歳より前に初診日がある方は、年間所得によって障害年金の支給停止の可能性があるため、年に一度、所得状況届を提出しなければなりません。
また、20歳より前に初診日がある方は、
- 恩給法や労働者災害補償保険法による年金給付などを受け取っているとき
- 刑事施設・労役場などに拘禁されているとき
- 少年院などの施設に収容されているとき
- 日本国内に住所がないとき
といったケースでも、支給停止となります。
障害年金の失権
失権とは、「障害基礎年金」「障害厚生年金」ともに受給できる権利そのものがなくなることです。
権利が無くなれば、当然障害年金の支給はなくなります。
失権の原因には次のようなものがあります。
- 障害年金を受給している本人が亡くなったとき
- 障害等級に該当せず支給停止となり65歳になったとき、または支給停止から三年が経過したときのいずれか遅い方の日が到来したとき
- 複数の障害を併せて別の障害等級に変更されたとき
障害年金の差し止め
支給停止と同じような状態で、支払いが保留される『差し止め』があります。
差し止めは、現況届や更新の診断書などの書類を期限までに提出しなかった場合などに起こります。
こちらは、あくまで支給の差し止めなので、更新が処理されれば、障害年金額が差し止められた月まで遡って支給されます。
まとめ
今回は、障害年金の受給期間と受給に必要な更新、支給停止について説明をしました。
障害年金は、明確な期限をもうけている制度ではなく、受給の権利があり、かつ認定基準に該当し続ける限りは受け取ることができます。
しかし、場合によっては、支給停止になり支給されないこともあり、一度支給停止になってしまうと、手間や時間、費用を要するようになります。
どのような場合に支給停止になるのか、権利がなくなるのかなどを、きちんと把握しておき、事前に準備し対応することが大事になってくるのです。