障害手当金とは、「障害の程度が障害厚生年金の対象となる1~3級相当よりも軽い(いわゆる4級相当)障害が治ったときに支給される一時金」です。
なお、ここでいう「治った」とは医学的に治癒したと診断された日、または治療を続けても改善の効果が望めない状態(症状固定)となった日を言います。
障害厚生年金の認定基準に該当しない軽度の場合であっても、障害手当金を受給できる可能性があります。
ここでは、障害手当金について事例を織り交ぜながら分かりやすく解説します!
障害手当金と障害年金の違い
障害手当金と障害年金の大きな違いは、定期的に支給されるか、1回受け取って終了かという点になります。
- 障害年金 :偶数月の15日に定期的に支給される年金
- 障害手当金 :1回限りの一時金
障害手当金の受給金額
障害手当金の受給金額は一律に決められているものではなく、それまでの加入歴や受け取っていた給料の額などを用いて以下の計算式で決定されます。
障害厚生年金の報酬比例の額 × 2年分
※現在の最低保障額は約115万円
報酬比例の額は計算がとても難しいため、年金機構へ問い合わせる事をオススメします。
※具体な受給額の例は『障害年金の受給金額』をご参照下さい。
障害手当金の3要件
障害手当金が貰うためには、以下の3つの条件を満たす必要があります。
その他細かい条件もありますが、まずはこの”3つの条件”にご自身が該当するのかご確認ください。
それでは、3つの条件に関してみてみましょう。
【要件1】初診日に厚生年金保険に加入していること
初診日(現在の病気やケガで初めて病院へ行った日)に厚生年金へ加入している事が条件となります。
初診日に国民年金加入中の方は、障害手当金の対象とはなりませんのでご注意ください。(自営業、学生、サラリーマンの妻、20歳未満の方など)
※20歳未満の方であっても厚生年金に加入している方は対象となります
※初診日の詳細については『障害年金の初診日について詳しく解説します!』を併せてご参照ください。
【要件2】保険料納付要件を満たしていること
障害手当金を請求するには、障害年金と同様に一定以上の年金保険料を収めている必要があります。
「一定以上の年金保険料を収めている必要があること」を「保険料納付要件」といいます。
保険料の納付要件を満たすたいめには、以下のいずれかの基準を満たしている必要があります。
- 初診日の前々月迄の年金加入期間において、年金保険料の納付済期間と免除期間の合算月数が3分の2以上あること
- 初診日の前々月迄の過去1年間に年金の滞納月が無いこと
※納付要件の詳細については『障害年金の受給要件』で詳しく解説しています!
【要件3】初診日から5年以内に、その病気や怪我が治ったこと
障害手当金を請求するには、その原因となった病気や怪我が治っている必要があります。
障害手当金の認定基準である「傷病が治った場合」とは「医学的に傷病が治った状態」と「疾病の固定性が認められた時」のことを言います。
「疾病の固定性が認められた時」と言われても、どのような状態なのか、よく分かりませんよね。
分かりやすく言いますと、「これ以上治療の効果が期待できなくなった状態」のことです。
障害手当金の認定基準は以下の様に定義されています。
「傷病が治った場合」とは、器質的欠損若しくは変形又は機能障害を残している場合は、医学的に傷病が治ったとき、又は、その症状が安定し、長期にわたってその疾病の固定性が認められ、医療効果が期待し得な状態に至った場合をいう。
障害手当金の請求方法
よく次のような質問を頂く事があります。
- 障害手当金はどうやって請求を行いますか?
- 障害年金が不認定となったら後に障害手当金の申請を行うのですか?
障害手当金の請求は年金と異なり専用の請求用紙はありません。
障害年金と同じ書類を用いて請求を行った結果、障害厚生年金1~3級に該当しないため4級相当の障害手当金が支給されるという流れになります。
障害手当金は最寄の年金事務所が請求の窓口となります。
障害手当金のタイムリミット
障害手当金とは、障害が「治った(症状固定)」日から5年以内に請求した場合に限り支給されます。
つまり、「そのような制度を知らなかった!」という場合であっても5年を過ぎてしまうと受給はできないのです。
本来は障害手当金の受給が出来るにもかかわらず「自分は障害年金に該当しないから、、、」「主治医にあなたの状態では申請しても無理です」といった理由から障害手当金の権利を失っている方が多くおられますのでご注意ください。
障害手当金の認定基準
厚生労働省の発表している「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」によると障害手当金の基準を次のように定められています。
視力など目の障害
- 両眼の視力が0. 6以下に減じたもの
- 一眼の視力が0. 1以下に減じたもの
- 両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
- 両眼による視野が二分の一以上欠損したもの又は両眼の視野が10度以内のもの
- 両眼の調節機能及び輻輳機能に著しい障害を残すもの
視力障害の詳細については『目(眼)の障害認定基準』で詳しく解説しています!
聴覚の障害
- 一耳の聴力が、耳殻に接しなければ大声による話を解することができない程度に減じたもの
聴覚障害の詳細については『耳(聴覚)の障害で障害年金を受給するためのポイント』で詳しく解説しています!
鼻の障害
- 鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの
平衡機能の障害
- 神経系統に労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの
そしゃくの障害
- ある程度の常食は摂取できるが、そしゃくが十分できないため、食事が制限される程度のもの
言語の障害
- 話すことや聞いて理解することのどちらか又は両方に一定の制限があるものの、日常会話が、互いに確認することなどで、ある程度成り立つもの
手の障害
- 一上肢の3大関節のうち、1関節に著しい機能障害を残すもの
- 長管状骨に著しい転位変形を残すもの
- 一下肢の3大関節のうち、1関節に著しい機能障害を残すもの
- 一下肢を3センチメートル短縮したもの長管状骨に著しい転位変形を残すもの
- 一上肢の2指以上を失ったもの
- 一上肢のひとさし指を失ったもの
- 一上肢の3指以上の用を廃したもの
- ひとさし指を併せ一上肢の2指の用を廃したもの
- 一上肢のおや指の用を廃したもの
足の障害
- 一下肢の3大関節のうち、1関節に著しい機能障害を残すもの
- 一下肢を3センチメートル以上短縮したもの
- 長管状骨に著しい転位変形を残すもの
- 一下肢の第1趾又は他の4趾以上を失ったもの
- 一下肢の5趾の用を廃したもの
背骨の障害
- 脊柱の機能に障害を残すもの
事例
- 45歳 男性
- 既往歴 無し
- 交通事故による左足首全廃
- 身体障害者手帳 5級
車を運転中、よそみ運転が原因でガードレールに衝突事故を起こしたとの事です。
骨折や皮膚欠損などの重症を追うものの、一命は取りとめましたが左足首の関節が動かない状態(全廃)となりました。
退院後もリハビリを行うものの症状は改善しませんでした。
長時間の歩行や階段の上り下りに困難はあるものの、杖などの補助用具は使用しなくても日常生活を送れることから元の仕事に復帰して元気に過ごしていました。
ある日、会社の同僚より障害年金の存在を聞き、ダメ元で当センターへ相談した結果、障害年金には届かなかったものの、障害手当金(約120万円)を受給することが出来ました。
よくある質問
障害手当金に関してよく頂く質問をご紹介します。
Q.うつ病でも障害手当金は貰えますか?
障害手当金を請求するためには、その病気や怪我が「治った=症状固定」状態である事が条件となります。
うつ病などのメンタル疾患では「症状固定」という概念が無いため障害手当金は受給できません。
※「症状性を含む器質性精神障害」を除く
Q.障害手当金を貰うと障害年金は貰えませんか?
障害手当金を受給した後であっても、その後症状が悪化するなどの条件が揃えば障害年金へと切り替える事ができます。
ただし注意点として、以下の全てに該当する場合には障害年金への切り替えに伴い障害手当金の返還が必要となります。
①障害手当金と「同一傷病により」障害の程度が障害年金に該当した場合
②障害手当金の支給から5年未満の場合
③65歳未満の場合
※他の病気やケガと併せて「初めて1.2級」の障害年金を受給するケースでは障害手当金の返還は不要です。
Q.傷病手当金とは違う制度ですか?
障害手当金と傷病手当金は名前が良く似ているので勘違いされるケースが良くあります。
傷病手当金はサラリーマンや公務員の方が病気やケガのため仕事を休み、報酬が受けられない場合に支給される制度になります。
障害年金や障害手当金は原則として初診日から1年6ヶ月経過しなければ支給が出来ないのに比べて傷病手当金は要件を満たす事ができれば早い段階で貰えると言う特徴があります。
各制度を十分に活用して受給漏れの無いようにご注意ください。
傷病手当金の詳細については『傷病手当金とは?』で詳しく解説しています!
まとめ
いかがでしたでしょうか。
病気やケガで障害が残ってしまった方の中には、「自分は軽いから障害年金に該当しない」「障害年金は3級まで」といった理由から本来は受給できても諦めてしまっている方が多くおられます。
障害手当金の受給に関しては今回お話しましたのような細かい決め事がありますので、専門家以外の方がご自身の判断で受給の可否を決められると、誤った判断をされる危険もあります。
障害手当金は基準がとても複雑で、ときに曖昧に規定されている部分もありますので、受給・申請に関して不明な点がある場合は専門とする社会保険労務士へご相談されることをオススメします。
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